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自白の裏付け不足を自己批判…足利事件で警察(読売新聞)

 足利事件の逮捕から釈放まで17年半。

 あまりにも長い歳月を、1人の男性から奪ったのは、DNA鑑定という「科学への過信」と、ずさんな裏付け捜査だった。先月26日に再審無罪が確定した菅家利和さん(63)の足利事件を巡り、1日公表された警察庁の捜査検証結果の報告書。「自白のみを求める姿勢で取り調べをしたことは誠に不適切」「供述のうち裏付けが取れたものはほとんどない」――。捜査に対する厳しい指摘に、当時の栃木県警の幹部たちは「厳粛に受け止めるしかない」などと言葉少なに語った。

 「あの時は、万全を期したつもりだったが、無実の菅家さんを長きにわたって拘束したことを重く受け止めないといけない」

 菅家さんが逮捕された1991年12月、栃木県警本部長として捜査の総指揮にあたった山本博一さん(69)は、警察庁が県警の捜査に厳しい結論を出したことについて「やはり捜査に抜け落ちた部分があったのだろう」と振り返った。

 東京高裁が実施したDNAの再鑑定で菅家さんが犯人でないことが確実になり、昨年6月、菅家さんが釈放された後、山本さんは、県警の当時の幹部らに「受け入れてほしい」という趣旨の手紙を送っている。手紙には、菅家さんに「心の中で謝罪しないといけない」という意味も込めていた。「『当時の状況では仕方なかった』と言ったら同じことを繰り返してしまう。事件から得た教訓を生かし、再発防止に努めてもらいたい」。今、山本さんが言えるのはこのことだけという。

 公表された警察庁の報告書は、厳しい指摘が並んだ。

 「菅家氏が犯人であろうという誤った先入観を持って、任意同行や取り調べに臨んだと考えられる」

 「取り調べは予断を排し、真実の発見を目標として行われるべきなのに、自白のみを求める姿勢だったことは誠に不適切だった」

 「捜査主任官の取り調べで自白を得たため、捜査会議でも他の捜査員がその信用性に疑問を呈することが難しくなった」

 これについて、県警の当時の刑事部長は「厳粛に受け止める」と静かに語った。報告書が、「1000人に1・2人」程度だったDNA鑑定の精度を過大評価したことが「虚偽自白に追い込んだ」とした点には、「そうですね」と小さく答え、「真犯人を見つけられなかったことが心残りだ」と唇をかんだ。別の元捜査幹部は「自白の裏付け捜査の中で、解明できない部分もいくつかあった」と、報告書で指摘された問題点を認め、「結果として間違ったことには変わりない。虚偽供述を見抜けなかったという一点に尽きる」と述べた後、「悔しい思いは消えない」とうつむきながら話した。

 一方、報告書について、菅家さんは、弁護団を通じ「まだ現物を手に入れていませんので、きちんと中身を読んでから、考えを述べたいと思います」というコメントを発表した。

 ◆足利事件…栃木県足利市の河川敷で1990年5月、当時4歳の女児の遺体が見つかり、県警は91年12月、女児のシャツの付着物のDNA鑑定などをもとに元保育園運転手の菅家利和さんを殺人容疑などで逮捕した。2000年7月、最高裁で無期懲役が確定したが、再審請求の過程でDNAを再鑑定した結果、別人のDNAと判明。東京高検は昨年6月に菅家さんを釈放し、宇都宮地裁の再審公判で、先月26日に無罪が確定した。

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